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【あるひとつの愛の日々】 全13話

【あるひとつの愛の日々】 5

実は父の自殺行為の後には続きがある。

ほとんど、人に話した事がない。

この話は実にめんどうで

『あの日、私の父親はいなくなった』

としていたほうが楽だったからだ。

そう、まさかの、

【即死できなかった】

のだ。

私はあの時ほど、人間の生命力のしつこさを感じたことはない。

すぐに手術室に運ばれて
粉々になった脳挫傷の骨の破片を取り除き、
全身の緊急オペに入った

その後、5回の大手術を超えて

父は記憶を失い

大量の安定剤の薬漬けになり

知的機能も身体機能も失い

童子となった。

寝たきりからヨチヨチと歩行できるようになるまで、
3年はかかったと思う。

その間、

『脳挫傷による水頭症で頭が3倍に膨れ上がっている』 

とか

『水を抜く手術をしたら頭蓋骨が無いところが陥没して顔が半分に凹んでいる』

とか

『動かない身体と考える知能が失われた姿で、目だけがギョロっと動いている』

とか

そんな話をきくほどに、

病院に通う母が気の毒で
付き添いで一緒に向かっても

私は病室の前で足がすくんで
ずっと、父の姿を見る事ができなかった。

………………………………………………

こんな年月がどうだったかというと…

真相は

あの日から

私達家族は
救われたのである。

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