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【あるひとつの愛の日々】 全13話

【あるひとつの愛の日々】 10

実家では、私の帰りを待って葬儀が執り行われた。

終始、和気藹々としたものだった。

幼なじみが運営していた葬儀場で

母、兄、姉、私達家族は
父を精一杯見送れる自立した自分達を実感していた。

達成感すらあった。

同僚や後輩達が大勢駆けつけてくれた

親友達も来てくれた
 
何処から聞いたのか
長年支えてくれた以前の恋人も参列してくれていた

………………………………………………

葬儀後、久しぶりに少しの休暇をとった和やかな日に
私は父の人生を想っていた。

(父は私達家族の心が癒えるのを待っていてくれたのではないか?)

父が過ごした空白の15年という年月は

私の心を成熟させるのに
大いに必要な時間だったように思う。

『これが父なりの【子育て】の形だったのか…』

即死しなかったことの意味が

解った気がした。

激しい自分の人生をかけて
生き様を見せつけてくれた

その存在は

私の人生に、重要な経験値を与えてくれた。

あの辛い闇の日々を美化することは
できない

が、

もしかすると人一倍、
他人の気持ちがわかるようになれたのかもしれない。

そして
父は私に
生きる意味と価値を気付かせてくれていた。

全てを叶えて思い通りの人生をひらいてゆくことができる力強い精神力

事象を受容しながら歩み進むことができるしなやかな忍耐力

ユーモアと共に内観し成長し続けられる知性

正直で、いつでも自分の中に灯る大きな愛のもとに還れる申し分ない幸福の精神

人を真に愛し赦す事ができる自立した人格

何もかも
これらの気付きは
私に
この人生が宝物であることを自覚させてくれた。

父の『子育て』は
大成功だった。

………………………………………………

きっと
一番辛かったのは、
父だっただろう。

こうして
あるひとりの人間の人生が終わった。

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